ストックオプションとは?

 
ストックオプションとは株式報酬制度のひとつで株式会社の役員や従業員が【権利を行使できる期間内にあらかじめ定められた価格で自社株を購入できる権利】のことをいいます。日本では1997年5月の改正商法により可能となりました。
役員や従業員に対して、あらかじめ決められた価格(行使価格)で株式を取得できる権利を付与します。
ストックオプションが付与された役員や従業員は、将来株価が上昇した時点で権利を行使することができます。すなわち、実際の株価よりも低い金額で株式を取得することができるのです。
(権利行使価格で購入した株式を、株価が上昇したタイミングで売却すれば、通常の株式投資より大きな利益が得ることが出来ます。)
株価が上昇するとその分実質的な報酬が増える仕組みになっている為、企業側にとっては役員や従業員のモチベーションアップや優秀な人材確保につながり、人材の流出防止対策にもなる制度です。
 
ストックオプションの仕組み 
ストックオプション制度の仕組みには、会社の規定によって購入可能な期間や数量に一定の制限が課されるものの、その制限を超えない限り、事前に定められた価格と期間でいつでも自由に自社の株式を購入できるという点が大きなポイントです。
 株価が上昇したとき
1株あたりの株価が2,000円であるA社が、従業員のB氏に対し「今後10年間、いつでもA社の株式を500株まで1株2,000円で購入することを
認める」旨のストックオプションを付与したケースを想定します。
その後、A社の業績が好調に推移し、5年後に株式市場で1株5,000円にまで株価が上昇した場合、このタイミングで権利を行使すると、
B氏はA社の株式を市場価格より3,000円安い価格(2,000円)で購入することが出来ます。 
ここで、500株を1株2,000円で購入し、時価である5,000円で売却した場合、B氏は【1株3,000円の利益X500株】で150万円の売却益を得ることができます。

 株価が下落したとき
上記とは反対に、A社の業績悪化により、5年間で株価が下落する可能性も考えられます。とはいえ、このケースにおいても、権利を行使しない限り、株
式を購入したことにはならず、権利を付与されたB氏が損失を被ることは基本的にないのです。
以上のことから、一般的に、ストックオプションの権利が行使されてるのは、対象の株式が時価が権利行使価格をうわまったときであるといえます。 


ストックオプションのメリット

 

優秀な人材の採用

ストックオプション制度を利用すれば、将来的なインセンティブを広く外部にアピールできるため、会社の魅力度を向上させて、優秀な人材の採用につなげられます。最近では、多くの転職情報サイトにおいてストックオプション制度の有無で企業の求人情報を検索できるようになっており、求職者からの注目度の高まりを裏付けています。
たとえ優秀な技術や製品があって将来性が高い企業であっても、スタートアップやベンチャーでは、人件費に使える資金が潤沢ではないので、優秀な人材の獲得が難しいケースが多く見られます。しかし、こうした財務面に余裕のない企業であっても、ストックオプションにより将来的な報酬への期待感を与えられれば、採用活動を強化できます。
 

人材の流出防止

ストックオプション制度を通じて入社した従業員の立場からすると、「権利を行使する前に辞めてしまうと、利益が得られずにもったいない」という思いから、退職を控える動きが予想されます。そのため、人材流出を防ぎやすくなる点もメリットの1つです。
 

 従業員のモチベーションの上昇

ストックオプションを付与された従業員や取締役は、将来的に自社の株主となるため、自社の業績が自身の報酬に直接的な影響を及ぼすようになります。多くの場合、自社の業績が向上すればするほど株価が上昇し、獲得できる利益が大きくなります。
つまり、広義のインセンティブが働くことから、株価の上昇や企業価値の向上といった一致した目標に向かって成果を挙げられるように努力し、会社や株主に損失を与えるような行動(例:不正、不祥事)を避けるようになると考えられます。
このように、従業員のモチベーション、忠誠心、モラール(士気)、団結精神などの向上が期待できる点は大きなメリットです。
ちなみに、インセンティブの効果を増大させたい場合は、以下のような条件を盛り込むことが効果的な施策であると考えられています。
●一定の株価に達しなければ、権利の行使を認めない
●株価の時価が権利付与時の価格の◯倍に達したら、行使価格が大幅に安くなる
このように明確な条件を設けることで、付与対象となる従業員や取締役側に「業績を向上させれば利益を得られる」というストックオプションのメリットを理解させやすくし、業績向上という目標に向けた努力を促進させる効果があるのです。
 

 従業員にリスクがない

自己資金での株式投資には、換金時の受取金額が当初支払った金額よりも下回るという「価格変動リスク」が伴います。その一方、ストックオプションの付与に関しては、基本的にこうしたリスクがありません。
例えば、従業員や取締役が自己資金で自社株を購入する場合、株価が下落すれば損失を被ります。
しかし、ストックオプションを付与された場合は、仮に株価が下落したとしても、権利を行使しない限りは損失を被りません。
つまり、通常の株価取引に伴うリスクがないのです
 

 株式の持分の回復ができる

株式の持分比率が低下している企業は、株式価値の希薄化や経営の自由度低下などのリスクが伴います。
こうした企業では、経営陣、従業員がストックオプションの権利を行使することで、株式持分を回復することが可能です。

ストックオプションのデメリット

 
 

業績悪化によるモチベーションの低下 

どんなに高い成長性が見込める企業であっても、景気変動や自然災害などが要因となり業績が悪化し、株価が下落するリスクはあります。
このとき、ストックオプション制度を目当てに入社していた従業員や取締役のモチベーションを低下させてしまいかねません。
 

 権限有無による社内不和

ストックオプション付与の基準が不明確な場合、権限の有無を巡って従業員や取締役の間に不公平感が生じ、社内不和に陥ったり、モチベーションやモラルの低下を招いたりするおそれがあります。
そのため、あらかじめ付与の基準を明確に決めておくことが望ましいです。具体例を挙げると、会社業績への貢献度や勤続年数に応じて、権利行使価格や付与する株式数を定めるといった制度設計が効果的だといえます。

 権利行使後に従業員が離脱する

ストックオプション制度をアピールして採用した人材の場合、権利の行使による利益の獲得のみを理由に会社に留まっている可能性もゼロではありません。
こうした人材からすると、権利行使後は会社に残るメリットがなくなるため、転職によって離脱を図る可能性があります。
 

 ストックオプションの税制優遇措置

 ストックオプションには2種類あります。
ストックオプションの税制の適用を受けて取得する【税制適格ストックオプション
ストックオプション税制の適用を受けないで取得する【税制非適格ストックオプション
会社より与えられたストックオプションがどちらに該当するかにより、課税時期や所得区分等が変わるため注意が必要です。 
ストックオプションの付与に伴い、対象者に過大な税負担が発生してしまえば、十分なインセンティブ効果が望めません。そのため、多くのスタートアップでは、税制優遇措置の適用を受けられる「税制適格ストックオプション」を活用しています。
税制優遇措置の適用には、「課税タイミング」と「税率」という2つの側面でメリットがあります。
もともと税制適格要件を満たさない場合【非税制適格ストックオプション】は、権利行使によって株式を交付されたタイミングと、
株式売却によって
利益を獲得したタイミングの2度にわたり税金が課されます。
とりわけ権利行使時にその時点までの経済的利益に対する課税は、まだ株式を現金化していない段階であることから、資金面での負担が大きいです。

一方、税制適格ストックオプションの場合は、株式売却時にのみ税金が課されます。
権利行使時の経済的利益については課税されない代わりに、売却時点で経済的利益と売却利益を合わせて課税されます。
つまり、権利行使時の課税を繰り延べられ、株式売却によってキャッシュを獲得した時点で課税を受けられるのです。 
このときは、株式の売却額が権利行使時の株価を上回っている部分について譲渡取得として課税対象となりますが、税率は住民税を合計しても約20%程度であり資金面での負担が比較的軽いです。
 株式売却の際の譲渡所得税率 一律20.315%(国税15.315%・地方税5%)
このように税制優遇措置には大きなメリットがありますが、適用を受けるには主に以下の要件を満たす必要があります。
 ●付与対象者が、自社およびその子会社の取締役、執行役、使用人およびその相続人であること(大口株主や大口株主の特別関係者は除く)
 ●付与対象者が、発行株式総数の50%超を直接的または間接的に保有する法人の取締役、執行役、使用人およびその相続人であること。
 ●ストックオプション税制の適用対象者を、従来の社内の取締役及び従業員等から、高度な知識又は技能を有する社外の人材にまで拡大する制度です。
 
 ●権利行使期間が、付与決議の日後2年を経過した日から付与決議の日後10年を経過する日までであること。
 ●権利行使価格が、ストックオプションに関する契約締結時における1株あたりの時価以上であること。
 ●権利行使価格の年間の合計額が1,200万円以下であること。
 
ざっくりまとめると・ 税における税制適格ストックオプションと税制非適格ストックオプションの違いとは?
                税制適格ストックオプション  👉株式売却時にまとめて課税。
 税制非適格ストックオプション👉権利行使及び株式売却時の2度課税関係が生じることとなる。
 
 税制適格 ストックオプション売却した際に課せられる税金 譲渡所得の課税対象
(売却時点で経済的利益を売却利益と合わせて課税)
 税制非適格ストックオプション算出した金額が経済利益として 所得税の課税対象 (給与所得又は雑所得の対象となる)
売却した際に課せられる税金 譲渡所得の課税対象(権利行使時株価を取得価格とする)

 ストックオプションと新株予約権との違い

ストックオプションと合わせて用いられる言葉に、新株予約権があります。そもそも新株予約権とは、「株式会社に対して行使することにより当該株式会社の株式の交付を受けることができる権利」であると定義されています(会社法2条21号)。
この新株予約権の中でも、会社が従業員や役員などに対し報酬として発行するものを特にストックオプションと呼んでいるのです。
つまり、ストックオプションは新株予約権に包含されているという関係性にあります。
 
 ストックオプションの手配におきましては、弊所にて打ち合わせの上、報酬等のご説明をさせていただければと存じます。
 当法人は企業法務におきまして顧問料は頂いておりませんがご依頼を頂きましたら、御社の顧問同様務めさせて頂く所存でございます。
【司法書士業務内にての対応。それ以外は他士業など連携してサポート致します。(連携先では別途報酬・手数料などかかります)】